2023年11月19日、特定非営利活動法人みかんぐみ(以下、みかんぐみ)と一般社団法人Nurse for Nurse(以下、NfN)の主催による「医療的ケア児・重症児等の当事者ご家族と看護職の交流会〜お互いの声を聴いてみよう〜」と題した交流会イベントが開催されました。オンラインで開催され、関東、近畿、九州・沖縄地方など全国各地から、たくさんのご家族および看護職、看護学生にご参加いただきました。
イベントの前半は、ご家族と看護職それぞれにご発表いただきました。モデレーターの清泉女学院大学小児看護学教授の北村千章氏からはこの10年で医療的ケア児は約2倍に増加しているというデータと共に、「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」の施行を受け、医療依存度が高くても子どもたちは地域に帰って学校に行く時代を迎えているというお話がありました。
続いてご家族より、「家族の生活と看護職との関わり」と題したご発表がありました。訪問看護や在宅レスパイトの利用状況、通学バスの課題などが紹介され、子どもたちの支援にあたる看護職がもっと増えることが望まれるとお話されました。また、「知識を持ってケアができる人の存在は、ハンディを持って生まれた子とその家族の可能性を広げてくれる」というご経験の共有もありました。
その後、訪問看護ステーションハートフリーやすらぎ管理者の田端支普氏および一般社団法人MEPL代表理事の木内昌子氏から、それぞれ看護師としてのキャリアの変遷とともに看護職としての考えが発表されました。
田端氏は、10年に渡って小児科を含む混合病棟や産婦人科を含む混合病棟に勤務されてきました。2006年から現在の訪問看護ステーションにご勤務され、2017年から医療的ケア児の訪問看護を開始されています。ご発表では、初めて医療的ケア児のお母さまからご相談を受けられたときの様子が紹介され、「親御さん方は仕事もしながら本当に一生懸命子育てしていますので、私たち看護師は一緒に子育てをする仲間になれたらいいなと思っています」とお話されました。
木内氏は看護師として療育センターで入所から通所支援を行い、その後小児の訪問看護ステーションの立ち上げに携わられたご経験を共有いただきました。現在は区立学校に入学する子ども達への看護師配置、在宅レスパイト、旅行付き添い支援、研修開催などをされていますが、医療的ケアが必要な子どもたちへの支援をさらに拡充していく必要性をキャリアの節目節目で感じ、ここまで歩んでこられました。子どもたちの学校生活を支えるために「準備は必要だが、諦めなければ、いろんなことが実現できる。可能性を最大限に伸ばしてあげたい」という内容のご発表でした。
看護職、ご家族の発表を受けて、北村氏からは「生まれてきたお子様の可能性を両者で大事にしながら、一緒に考え、できることから始めていく、そして諦めない。(中略)お子様の可能性を信じて、看護職は保護者の方と一緒にお子様にできることを今後も考えていけるような連携をとれると良い」というコメントがありました。
そして、みかんぐみ副代表の荻野様から「看護職、当事者家族、それぞれの課題はあると思うが、きっと壁は打ち破られるのではないか、という勇気が湧いてきました」という言葉によって締めくくられました。
前半のご発表部分に対して寄せられた感想は下記の通りです(一部抜粋)。
看護職の話のみではなく、医ケア児・重心児を養育するご家族の生の声を聴くことができて、今後看護師として患者さんやご家族の方と関わる中で意識することを学ぶことができ、とても満足しています。(看護学生)
保育園看護師です。保育園に医療的ケア児を積極的に受け入れたいと思い参加しました。保護者様の思いを聞いたり、課題を聞くことができ、とても参考になりました。(看護職)
それぞれの地域で実際のお話し、取り組みも大変参考になりました。ありがとうございました。(ご家族)
今回、医療的ケア児のお子さんたちの通園・就学の現状を知りたいと望んで参加しました。一般的な研修などでは分からない、生の声を伺えました。通学の段階で、同行する看護師不足など、サポートが足りていない現状を初めて知りました。(看護職)
看護師さんたちの活動が見えてよかったです(ご家族)
当事者の方から直接お話を聞ける機会があること。そして、一緒になって考えられること。お互いに知らないことが多くあること。そして、子育て経験のある方から現在日々ケアに携わっている方からの声を聴けるのは、100本の論文を読むよりも価値があると感じました。ぜひぜひ、続けて頂けたらと応援したいと思っています。(看護職)
看護職の視点、家族の視点、それぞれの発表があり、課題を共有することができたように思う。(看護職)
会の後半は「保育所・行政」「訪問看護」「学校」という区分でブレイクアウトルームに分かれ、交流会を行いました。看護職からご家族へ質問をしたり、居住地域による看護サービスの違いについての情報交換がおこなわれるなど、各グループで有意義な交流となりました。ご参加された方々の感想は下記の通りです(一部抜粋)。
発言者が8名程度でファシリテートもしてくださったので、とても話しやすい雰囲気でした。当事者の方も複数名入ってくださっていたので様々な意見を聞くことができ、また事業として専門的に関わっている方のお話も参考になり、得るものが多かったです。(看護職)
ケアする側とされる側の距離が近くなったように思った。(ご家族)
実際の生活、職場での体験からの声を聴き、地域による違いがあることもわかりました。交流の大事さを含めとても貴重な学びでした。(看護職)
お互いが不安なく安心・安全にケアするにはコミュニケーションが大事だということがわかった気がします。(ご家族)
本イベントはお互いの声を聴いて相互理解を深めることを目的とした会でしたが、ご家族には看護職が何を考えながら看護を実践しているのか、看護の役割についてご理解いただき、看護職にはご家族の思いを聞いていただきながら、子どもたちにとってより良い支援につながるためのヒントを得ていただけたように思います。NfNでは今回の学びや気付きを全国各地に持ち帰っていただくことで、子どもたちへのより良いケアにつながることを願っています。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
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